【掲載記事】ecoに取り組む事業所 by 西宮商工会議所 (Report 2013 March)
〜 eco環境に取り組む事業所 第44回「株式会社 山澤工房」〜
日本が誇るリサイクル技術にこだわる「かばんの総合病院」
質にこだわり、保険会社向けでトップシェア
西宮市山口町にある山澤工房の作業場には壊れたスーツケースやブランドバッグが毎日100個近く運び込まれてくる。 金具外れ、 亀裂、 へこみ、ゆがみ・・・と症状 はさまざまだが、これを15人ほどの技術者が、かなづち、 ミシン、 スプレーガンなどを使って手際よく元の状態に戻していく。たとえばスーツケースの樹脂製カバーに亀裂ができた場合、まず裏面に補強剤をあて、表の割れた部分に熱をかけて溶着した上で研磨をかけ、 最後に塗装を施す。
「塗装は元の色に正確に合わせるため、数百種類ある塗料を組み合わせて調色し、再現している」 と、 社長の山澤高明氏。
修繕の質にこだわるこうした姿勢が評価を受け、かばん修繕を組み込んだ保険を展開する損保会社からの受託ではトップの扱い量を持つなど「山澤」 ブランドを定着させつつある。
感謝の手紙で、おもてなしの質も追求
創業は昭和54年。 山澤氏の父が当初はスーツケースのレンタル業としてスタートしたが、壊れて戻ってくるスーツケースが、多くその修繕コストがかさんでいたため、自ら修理業に乗り出した。父の仕事に幼い頃から触れていた山澤氏だったが、「いずれ世界を股にかけたビジネスを自分で興したい」と、学生時代はバックパッカーとして、世界30カ国以上を回った。
その際、各地でかばん修繕の現場を見るにつけ、「父の会社の技術が突出していることがわかった」。
「ものづくり日本」ならぬ「ものなおし日本」でも世界の先端を走っていると確信。
「もっともっとこの世界を究めようと思った」と継承を決意した。
技術レベルの向上に加え、 おもてなしの質も追求する山澤氏。
顧客から感謝の手紙が届くと、技術者が持ち回りで返事をしたためるようにしている。
「こうすることで仕事へのやりがいも感じてほしい」と話す。
スーツケース解体で障害者の仕事も創出
リサイクル社会の一端を支える企業として環境への取り組みにも力が入る。 破損が激しく顧客が引き取らないスーツケースについては、 従来は廃棄処分していたが、近年は金属と樹脂を分別しリサイクルできるようにしている。
3年前からは障害者を雇用してこの解体作業を任せている。昨年は、西宮商工会議所の支援を受け、 環境への取り組みを効果的、 効率的に行うための仕組みを構築するために環境省が定めたガイドライン「エコアクション21」の認証取得を目指す取り組みもスタート。
1月にはオフィスの屋根の全面に太陽光発電パネルを設置する工事も完了した。
「かばんは直せば使えるということをまだまだ知らない人に我々の事業をもっと広めていかなければならない」と山澤氏。
直したいと思っていても修理に出すのが面倒くさいと考える人のために、簡単に送ることができる宅配キットを開発するなど、潜在的な需要の掘り起こしにも努める。 また、近い将来、海外への進出も視野に入れている山澤氏。 自らの夢とも重ねながら、 鞄修理業のパイオニアとして更なる進化を遂げていこうとしている。
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